僕の雨になって

「初めまして。成瀬琉真(なるせりゅうま)です」

「晴架糸です」

「はるか、いとちゃん。すごい、アイドルみたいな名前だね」

「あー、琉真くん。それ禁句。この子、コンプレックスだから」

「えっ…ごめんね、初対面でいきなり…」

「琉真くん、全然大丈夫だから!時雨も、気にしてくれてありがとう」

「糸ちゃん、って呼んでもいい?」

「あ、良ければ糸って呼び捨てで大丈夫」

そう言ったのは咄嗟のことだった。
糸ちゃんって呼ぶのは紅華だけがいい。
頭で考えるよりも先に、気持ちが飛び出していた。

「じゃあ糸って呼ばさせてもらうね。俺のことも琉真って呼んでくれたら嬉しいです」

「はい」

「俺も糸って呼んでいい?」

「もちろん!(なぎ)くんも初めまして!」

「初めまして。名前、知っててくれてるけど一応、佐久間凪(さくまなぎ)です。糸のことはしーちゃんからいつも聞いてるよ」

「えー、恥ずかしいなぁ。しーちゃんってば何言ってるの」

「ちょっと糸。からかってるでしょ」

「えっ?しーちゃん、何が?」

「″しーちゃん″に決まってんでしょ!」

「あはは!可愛いじゃん」

少し人見知りだし心配していたけれど、
琉真も凪くんも話しやすくて、緊張がほぐれていく。

琉真の大失恋を慰める為に集まった会だったけれど、思っていたよりも元気そうに見えた。

初対面だから気を遣ってくれているのかもしれない。

運ばれてきた大盛りポテトに凪くんがケチャップをまんべんなくかけて、
琉真が「好みがあるんだからいきなりかけんなよ!」って怒っているのを時雨が笑っている。

「何、琉真ケチャップ苦手だっけ」

「だぁーいすき」

ケチャップが垂れそうなポテトを摘んで挑発する凪くんに、
琉真は五本まとめて頬張りながら言い返している。

「もー。小学生みたい。ね、糸」

「ほんと。年下みたい」