僕の雨になって

「時雨。ほんと、ありがとね。でもね私、怒る気にもなれないの」

「悲しいの?」

「違うよ。嬉しいの」

「え」

「そんなことどうでもいいって思えるくらい。肩書きも世間体も常識もどうだっていい。こーちゃんが好きだって言ってくれたことだけで私はこんなにも幸せな気持ちになれる。それだけで嬉しいの」

「ばかだねほんと…」

「うん。そうかも」

「あーあ。泣いたってもう慰めてやんないんだから」

「そんなこと言わずにお願いしますよー」

「くっつくな!暑苦しい!」

呆れた顔で早歩きで突き進んでいく時雨の背中を追った。

こんなにも思ってくれる親友が、
紅華よりもずっとそばに居てくれた親友が居るのに、

私の心はなんで紅華のことを求めてしまうのだろう。

恋は人をバカにさせる。
エゴで、わがままで、ポンコツにさせてしまう。

私だって紅華じゃなかったらもっと普通に幸せになれていたのかもしれない。

気づいてすぐに切り替えられるスイッチがあればラクだったのに、
残念ながら人間にそんな機能は備わっていない。

どうしたって私は紅華ことが好きで、
こうやってずっと、何度も紅華がくれた言葉ばかりを唱えてしまうんだ。