僕の雨になって

「糸ちゃん今日忙しい?夜お電話したい」

会えないまま、八月になった。

灼熱の太陽の下でも脳みそは溶けないまま、
紅華のことを考え続ける時間が増えていく。

こんなにも悩みっぱなしの恋ならしないほうがマシなのに。

考えても考えても幸せになれないのなら
私の心が可哀想なだけなのに。

なのに。ほら、また。
会えなくても声が聴けるだけで簡単に嬉しくなってしまう。

「なーに、ニヤニヤして」

時雨の家で、今日はちゃんと数学のドリルと向き合っていた。

完全に文系の二人にとって、数学のドリルなんて嫌悪の対象でしかない。

それでもなんとか解いてみようと試みる私に、
「無駄、無駄」なんて言いながら時雨は解答欄に
「分かりません」、「分かりません」、「不明」、「ナゾ」、「人生で役に立ちません」なんて書き続けている。

新学期、放課後の教室で補習にブーブー言っている時雨の姿が安易に想像できた。
…この調子だと私もだろうけれど。