「許可しました。ありがとう」

「うん。糸ちゃんの裏側覗けちゃうの楽しみだなー」

「そんな変なこと書かないから!」

「もう一人の子は友達?」

「そうなの!私の一番大切な親友だよ。だから、あのね、大切な人達にしか教えてないの」

紅華が小さく笑った気配がした。

「そっかぁ」って言った声が、なんだか甘ったるく感じる。

その日から、私は推し活アカよりも鍵アカを更新する頻度のほうが高くなって、
どっちが本アカなのか分からないほどだった。

学校のこと、両親の愚痴、時雨と過ごした放課後、
″好きな人″のこと。

更新するたびに時雨には「あんなこと書いて、もうバレバレなんじゃない?」って茶化された。

でも紅華が「自分のことだ」って気づいている様子はなかった。

私が″好きな人″のことを呟くたびに、
それに対抗するかのように紅華は彼女との写真を載せたりした。

私がどれだけ恋愛にのめり込もうと、
それは自分には関係のないことだと言われているようで寂しかった。

ううん。
本当はもしかしたら私の″好きな人″が誰なのか、本当に気づいているのかもしれない。
その答えが、紅華のSNSの更新に繋がっているのかもしれない、なんて
勝手に疑心暗鬼を繰り返した。