「なんで知ってんの」

「あのバス停らへん、糸ちゃんの高校のジャージ着てる子がいっぱ居たから。体育祭にしては早すぎるし、遠足かなーって」

「私の中学の体育祭、五月だったよ」

「じゃあ体育祭だったの?」

「ううん。遠足」

「ほらぁ」

「別にそんなこと当てても凄くないから」

「…糸ちゃん?なんかちょっと怒ってる?」

「別に」

「いーとーちゃん」

「…なんで無視したの」

「無視って?」

「昨日。メッセ送ったのに何時間も無視されてた」

「ああ、ごめんね。バタバタしながら素っ気無く返したほうが悪いかなって思って。昨日の夜さ、友達んちで飯食いながらそのまま泊まって、朝帰りしてからずっと寝てたんだ。で、そろそろ糸ちゃん帰ってきたかなーって思って電話してみました」

友達、なんて言って朝帰りするなんて彼女なんじゃないのって思ったけれど
それを追求する権利は私には無い。

「そっか」

「アカウント教えてくれてありがと。フォロバしたよん」

耳からスマホを離して、SNSを開いたら
紅華のアカウントからフォロー申請が来ている通知が届いていた。

「許可する」をタップして、
やっぱりすごく感じた安堵感と共に、
ゆっくりと深呼吸をした。