「…照れるじゃん」

「落ち込みモードの糸ちゃんをたまには慰めてあげないとねー」

時雨が自分の恋愛遍歴について、そんな風に悩んでいたなんて全然知らなかった。
親友なのに、時雨の内側に自分から踏み込もうとしていなかったんだと思った。

「時雨」

「んー?」

「悩んでることとかもっと話してくれていいんだからね…って言うのはちょっと上から目線だからさ。もっと時雨のこと知ろうとしてもいい?」

「…いいよ。糸だから。特別」

時雨が戯れるように私の肩に頭を乗せて、
目が合って恥ずかしい私達は、芝生の上に転げて笑い合った。

離れた場所から集合の合図のホイッスルが鳴り響いている。

もしも紅華から連絡が来たら、
私にはこんなに素敵な親友が居るんだって話を聞いてほしいと思った。