僕の雨になって

時雨は可愛い。

女の私から見ても、あの大きなくりくりの瞳と
ツヤツヤなくちびるで好きだって言われたら、
好きになっちゃってもしょうがないくらい、可愛い。

まだ十七歳なのに男性経験が豊富で、
しかも男運が悪いわけでもないのに単に時雨が飽き性なのか、
この世に一体何人の元カレを作るのか興味すら湧いてきそうなほどに、次々と彼氏が入れ替わっている。

そんな時雨に恋を説かれても説得力無いんだけど…。

心配してくれているんだってことは分かっている。

「あのね、しぐちゃん」

「どーしたの、糸ちゃん」

糸ちゃん、って呼ぶしぐれと紅華の口調は、
当たり前だけど全然違っていてちょっと笑ってしまう。

山の上だからなのか地上よりも涼しい風が吹いていて、
目を閉じれば眠ってしまえそうだった。