「久しぶりー！突然ごめんね。SNSの鍵アカ作ったんだー。愚痴とか吐ける場所欲しくてさ笑　良ければフォローお願いします」

そうメッセージを送信してから三十分、一時間…
数時間後には寝落ち。

起床後、はやる気持ちでスマホをチェックしたけれど
紅華からの返信も、もちろんフォローバックも無かった。

今、延々と坂を登っている私の脚は鉄の鉛みたいに重たい。

「やっぱさぁ…私に興味ないってことだよね」

「仕事忙しいんじゃん？」

「それか彼女ちょー優先とか？」

「それは元々なんじゃないの。彼女できたくらいで他は全部切っちゃうような男じゃん」

「彼女からしたら幸せだけどね」

「ちょっと怖いよ」

「なんで？」

「その人の世界の中心が自分になっちゃうのってちょっと怖くない？最初は嬉しくてもさ。あー、この人は自分の為に全部をゼロにしたんだって思えば思うほど自分の責任も増していくっていうかさ。全てを賭けられてるみたいで怖いよ」

私はそれでも良かった。
紅華にならそうしてほしかった。

自分が紅華の世界の全てになれるのなら
私も紅華の為だけに生きていけるのに。

そう思ったけれど、それって時雨ともお別れしなきゃいけないってことなのか。
それは確かに辛い。

だから余計に紅華の覚悟を実感してしまって、
私の心臓はうずうずと嫉妬が渦巻いていた。