僕の雨になって

「昨日アカ作ってたじゃん」

「うん」

「反応ないのー?」

「なぁーい」

鼻から短く息を吐き出した時雨(しぐれ)
呆れたような瞳をそのまま晴天過ぎる青空に向けた。

倉田時雨(くらたしぐれ)

高一の時に同じクラスになって、
すぐに親友になるくらいに私達は意気投合した。

時雨にはなんでも話せた。
嬉しいことも、悲しいことも、恥ずかしいことも、紅華のことも。

そして時雨は紅華のことを「胡散臭い」なんて言って、認めない。

出逢い方も言動も、女に対してだらしなさそうなところも全部、
「親友の恋を奪う相手として認めない!」らしい。

私は昨日、普段使っているSNSのアカウントとは別に、
もう一つアカウントを開設した。

一個目は好きなアーティストを中心にタレントや漫画家、絵師さんへの推し活、
友達との交流にも使っているから全体公開にしている。

鍵付きのアカウントにしてしまったら、
推し達にも私の「好き!」が届けられなくてつまんないから。

昨日開設したアカウントは鍵アカにした。
その存在を教えたのは時雨と紅華だけ。

時雨のことは本当に信用できる親友だし、
たまに愚痴や恋の悩みも呟きたいから、
複数人に教えることは躊躇した。

紅華に教えたのは、これこそがアカウントを開設した本当の理由だったから。

複雑な理由なんて無い。

「メッセージを送るきっかけが欲しかった」

ただそれだけだった。