「最近話してなかったけど凪くんは元気?」

「元気過ぎるくらいだよ」

「時雨が忙しくなったらあんまり会えなくなっちゃうんじゃない?」

「だーいじょうぶ。ちゃんと計画的に時間は作りますから」

「さっすがあ。あのさ…」

「うん」

「その…」

「…まったく。琉真くんも元気だよ。バイト先でエース過ぎて卒業後は社員になってほしいとか言われてるみたい。琉真くんはそんな気まったく無いみたいだけどね」

「琉真も頑張ってんだね」

「ほら、こーちゃん…引っ越したらしいじゃん?」

「ううん、知らない」

「連絡取ってないの?」

「うん」

「なんか遠くに行ったんだって。行き先は琉真くんにも言ってないみたい」

「知らないほうがいいよ。どこで生きてるのかなんて」

「なんで?」

「知ってしまったら会いたくなっちゃうから。会えないほうがいいんだよ。私達はちゃんと進まなきゃ」

「そうだね。ま、とにかく琉真くんの将来は安泰だと思うよー。何も心配要らないって感じ!」

「そっか。良かった。虫が良過ぎるよね。今更気にするなんて」

「そんなもんじゃない?私は安心したよ。あんたが薄情な人間じゃなくて」

「薄情だよ、私は。自分のことばっかりだった」

一瞬、風が強く吹いて、
どこからか舞ってきた桜の花びらが時雨の髪の毛にくっついた。

「あらら。私がイイ女だからってくっついちゃって」

「時雨のポジティブには敵わないなぁ」

「見習いなさい」

桜の花びらを右手でそっと包み込む。

「紅華」との共通点を探しては泣きたくなってしまう癖がまだ抜けない自分が、なんだかおかしかった。