「あ、栞は付属されていません。あれは俺の物だからね」
「そりゃそうだよ。付属されてたらショックです」
「でしょ。糸ちゃん、今までありがとね。本当に、ありがとう」
「こーちゃんも……こーちゃん」
「なぁに、糸ちゃん」
「忘れられない私を許してね」
あの大好きだった表情でニッて笑うから
あと一回、瞬きをしただけで泣いてしまいそうだった。
私も紅華も、いつかは忘れてしまうんだろう。
紅華の存在と名前だけが残って、
どれだけ忘れたくないと願ってもいつかはこんなにも大好きだった顔も声も、
糸ちゃんって呼ぶ口調も忘れてしまうのかもしれない。
あと二ヶ月もすればまた桜の季節がやってくる。
もう一度、一緒に見たかったなぁ、
いつか「紅華」と名付けられた桜を一緒に見たかった、なんて淡い想いは一生内緒にしておこう。
歩いていく紅華は一度も振り返らなかった。
その背中が見えなくなる前に、
違う方向へと私も歩き出した。
「そりゃそうだよ。付属されてたらショックです」
「でしょ。糸ちゃん、今までありがとね。本当に、ありがとう」
「こーちゃんも……こーちゃん」
「なぁに、糸ちゃん」
「忘れられない私を許してね」
あの大好きだった表情でニッて笑うから
あと一回、瞬きをしただけで泣いてしまいそうだった。
私も紅華も、いつかは忘れてしまうんだろう。
紅華の存在と名前だけが残って、
どれだけ忘れたくないと願ってもいつかはこんなにも大好きだった顔も声も、
糸ちゃんって呼ぶ口調も忘れてしまうのかもしれない。
あと二ヶ月もすればまた桜の季節がやってくる。
もう一度、一緒に見たかったなぁ、
いつか「紅華」と名付けられた桜を一緒に見たかった、なんて淡い想いは一生内緒にしておこう。
歩いていく紅華は一度も振り返らなかった。
その背中が見えなくなる前に、
違う方向へと私も歩き出した。
