「なんでこれにしたの」

「小説を自分で買うのって本当に初めてかもしれなくて」

「だと思った」

「ひどーい。でね、超初心者だから選び方も分かんなくてさ。この帯に惹かれて買ったんだよ」

「うん。分かる。素敵だよね」

「読んだことある?」

「実は無いんだ。ここまでの文豪ってちょっと難しそうなイメージで…」

「糸ちゃんにあげるよ」

「え、いいの?せっかく買ったのに」

「糸ちゃんと共有したいなって思った内容だったから。人ってさ、いろんな(きず)とか業を背負ってるけど、俺のこころはね、″それでもいいんだ″ってちょっとだけ思えたから」

「じゃあ読んでみるね。ありがとう」

「それでいつか糸ちゃんの感想も聞かせてね」

「いつか、また逢えたら」