「性転換手術…」

「うん。入院中にね、カウンセラーの人が何度か面会に来てくれたんだ。ホルモン注射とか手術のこととか教えてくれた。まだ話を聞いただけだから概要しか分かんないけどさ。自分でもしっかり調べて、それに向けて動こうと思う」

「もう決めたんだね」

「決めたよ。費用の問題とか体調とも相談していかなきゃだけどさ。手術を受けて、男の体になるって決意は変わらない」

「これからすごく大変になるね。不安じゃない?」

「不安だよ。すっごく不安。命に関わることだって稀にあるらしいし。でもそれなら今だって一緒じゃん。どうせ死んだような気持ちで生きていくくらいならさ、生まれ変われるチャンスを自分で掴みにいくよ」

「強くなったね。こーちゃん、今すっごくかっこいいよ」

「ほんと?嬉しい。あー、糸ちゃんに話すの、すげぇ緊張した」

「話してくれてありがとう。私が力になれることなんてそれこそ無いかもしれないけど応援してる。誰よりも…誰よりも、世界で一番」

「…なんで泣いてるの」

「嬉しいからかな。ううん…こーちゃんが旅立っていくなーってちょっと、寂しいのかも……今のやっぱ無し!嘘だよ、嬉しいよ、かっこいいよ」

「糸ちゃん、いいんだよ。変わっていくことは不安だしいつでも少し、寂しいことだから」

「でも本当だよ。本当に応援してる。いつかこーちゃんが思う正しいこーちゃんになって、世界中で誰よりも一番笑えるようになってね」

「糸ちゃん」

「な…」

なぁに、っていつもみたいに返事をしようとした時だった。

こーちゃんと私のくちびるが重なった。

それは、流れる自分の涙でしょっぱいキスだった。