「座ろうか」

「うん」

木製ベンチに並んで腰を下ろした。
斜め前でパンダの遊具に跨って無邪気に笑う男の子に目を奪われる。

スーパーマンみたいに飛んでいきそうな、はつらつとした笑顔で、
この子の将来はこれからいくらだって輝いていくのだろうと思った。

「そう言えばさ」

「うん?」

「私の彼氏が琉真だってこと、こーちゃん気づいてた?」

「とーぜんです」

「えー。いつから気づいてたの?」

「気づくも何もあいつに写真見せられたことあったから。ほら、糸ちゃんがいつも遊びに行ってる四人の写真。付き合い始めて割りと早く見せてもらったよ」

「なーんだ」

「どうしたの?」

「ううん。なんかさ、こう…ピンとキタ!みたいな、ドラマチックな真相の明かされ方とかじゃないんだなって。すごく平凡な日常だったんだなぁって」

「ドラマなんかじゃないからね。俺達が生きてるリアルだから」

「でもなんで琉真に言わなかったの?私のこと知ってるよって」

「糸ちゃんだって知ってるでしょ。あいつは超が付くほどのお人好しなんだって」

「ああ…そうだね」

優しかった琉真のことを思い出して、
なんだか笑みがこぼれてくる。

琉真がいつか自分の為だけに幸せを願えたらいいなって思った。

「糸ちゃん」

「はい」

「俺ね…、俺に見える世界はいつだってくすんでたけど、糸ちゃんが居る場所はいつだって眩しかったよ」

「…また大袈裟な」

「ほんとうだよ」

「…うん」

「いつ死んだって良かった。俺が生きてなんだかんだメソメソしたりしてたら人に迷惑かけるばっかりだし、そもそも俺みたいな不良品はさっさと死ななきゃいけないって思ってた。苦しんで生きて、死ぬ時も苦しいまま死ぬのかなって、ほんとはちょっと怖かった。糸ちゃんに出逢ってからね、ああ、もしかしたらこの光で失明して、世界のことなんてもう見なくて済んで、目を逸らしたまま幸福な死を遂げられるかもなんて期待しちゃったんだ。糸ちゃんってばとことん俺に甘かったからさ。自分で大丈夫になれてたわけじゃないのに、自分は大丈夫なんだって気になってた」

「バカだなぁ…こーちゃんはほんとに…。でもそれは違うって、もう気づいたんでしょ?」

「うん。糸ちゃんも?」