「ほんとだぁ。コク深い」

「でしょー。あ、糸ちゃん糸ちゃん」

「ん?」

「お口」

「あ」

ソースたっぷりのところにかぶりついたから、
口の周りにソースがいっぱいついてしまって恥ずかしい。

「お口ちっちゃいね。可愛い」

「もー!そういうことすぐ言っちゃだめだって言ったでしょ」

「でも今は彼女居ないよ?」

「それでもだめなの」

「褒めただけなのにー」

「はいはい、ありがとね。こーちゃん、こっちも食べてみてよ。このパインの蜜いっぱいのとこ。おいしそうだよ」

「じゃあ、一口」

しっかり味を確かめるように咀嚼してから飲み込んだこーちゃんが、眉間に皺を寄せて「おいしー」って言った。

その顔を見て今日、一番笑った。