「さっ、何食べるか決めよ!」

「うん。私はねぇ…、これにしよっかな!ベーコンアボカドとパイン!」

「え、糸ちゃんって食事にフルーツ入ってるのイケる人?」

「うん。むしろ大好きだよ。サラダにみかんとかりんご入ってたら嬉しいし、酢豚にパインも大歓迎。ピザもトロピカルっぽいやつ率先して選ぶよ」

「わー。俺はだめなんだぁ。酢豚にきゅうりもヤダ」

「それも私は好きだなぁ。ていうか…」

「うん?」

「ごめんね。私も本当は甘いドリンク好きじゃないんだ。ほら、コーヒーショップで飲んだ、フラペチーノ。あの後メロンソーダでお口直ししちゃった」

「あっはは!通りで全然減ってないなって思ってた」

「そんなとこ見てたの?恥ずかしいなぁ」

「俺ら一個も似てなかったね」

「うん。全然、違ったね」

優しい笑顔だった。

なんにも似ていない私達は、お互いを認めたくて、お互いに好きになってほしくて、
必死で歩幅を合わせていた。

こんな風に本当に好きな物を言い合えていたら、
もっと紅華の本質に近づけたかもしれないのに。

私の好きな物も もっと知ってもらえたのに。

それでも紅華の優しい笑顔が、
私達はこれで良かったんだって思わせてくれる。

だって寄り添った分、すれ違ってなんかいなかったから。

これが私達の正しさだったんだよね。