コン、コン、とゆっくりノックした、紅華の病室のドア。
中から返事は聞こえてこない。

ノブに手を掛けてスッとスライドしてみたら当然だけど簡単に開いてしまった。

真正面に、一台だけのベッド。
点滴に繋がれた紅華がゆっくりと首を動かしてこっちを見た。

「こーちゃん」

「…と…ちゃ…」

糸ちゃん、って言ったのかな。
うまく聞き取れなかったけれど、糸ちゃんって呼ぶ紅華の口調は思い出さなくても簡単に蘇る。