僕の雨になって

「お兄さんは今…」

「一度帰ったよ。頭冷やせって、俺がそうさせた」

「帰ったって!だって犯罪だよ!?紅華が訴えれば逮捕されるようなことだよ!なんでっ…!」

「俺だってどうすればいいのか分かんなかったんだよ!紅華のことが最優先だろ?あいつのこれからのことなんか考えてる余裕なんか無かった。目の前の紅華のこと以外に優先することがあったのかよ!」

「ごめん…ごめんなさい…そうだよね。琉真…私が言うのもおかしいけど。紅華のそばに居てくれてありがとう」

「…ごめん。大声出して。糸が悪いんじゃないのに。てか糸は間違ってないよ。すぐにでも警察に言うべきだと思う。ごめん、言い訳したかもしんない。人外みたいなことしやがって…本当に殺してやるって思ったのにちょっと冷静になってきたらさ…だめなんだよ…。だって兄貴なんだよ。尊敬してた、大切な兄貴なんだよ…。好きなのに…好きだった紅華のことこんなんされたのに…殺せないんだよ…」

今度こそ抱き締めた琉真の体が震えている。

どんな言葉をかけても琉真を地獄から救い出せない無力な自分が悔しくて堪らなかった。

「琉真、よく頑張ったね。一人で怖かったよね。頑張ったね」

「糸、これ」

静かに涙を流していた琉真がパーカーの袖で涙を拭いながら
ポケットから取り出した物を私に差し出した。

「これって…」

粒が小さい、シルバーのブレスレット。
紅華が退院した時に私があげた物だ。

粒の途中で千切れてしまっている。