僕の雨になって

「紅華を起こしてあげて。こんなとこで眠ってちゃだめなんだ。紅華はまだ生きてかなきゃだめなんだ。糸が紅華の悪夢を終わらせてあげてほしい」

固く結ばれた琉真の拳が擦り切れて血が滲んでいることに気がついた。

こんなに赤く腫れてしまっているのに
なんで私は気づくことができなかったんだろう。

「琉真、それ…」

私の視線を辿って自分の拳を見た琉真が、
泣きそうな目のまま口角だけを上げた。

「ああ…。ちょっとやり過ぎちゃったかもな。兄貴のこと、ボッコボコにしちゃった」

「なんでそんなこと」

「殺してやろうと思ったんだ」

「殺すって…」

「それだけのことしたって釣りが出るんじゃ無いかってくらい、許せなかった」

そう言って琉真は何も無い天井を見上げた。
その視線の先に紅華が居るみたいに。

「こーちゃん、ここに居るの?」

「五○二号室」

五階は確か、個室が多いフロアだったはず。
前回の入院の時は大部屋だった。

それだけの違いで容態の悪さを想像できて、不安が胸を打つ。

「何があったの」