僕の雨になって

「いつから知ってたの。自分が苦しんだ恋に苦しんでる女を自分がまた救おうとしてるって」

「絶対的に気づいたのはついさっき、糸に連絡する瞬間だよ」

「どうして?」

「これ」

琉真の手の中でくしゃくしゃに丸められていたのだろう。
いくつもの皺ができてやわらかく、ヨレヨレになったメモ用紙を渡された。

″何かあったら連絡してください″

そう走り書きされた言伝の下に電話番号が書かれている。
考えなくても一瞬で分かる。
私の番号だった。

大抵の人はスマホにロックをかけている。
本人以外が操作するのは難しく、緊急事態に陥っても、
病院、もしくは警察が元々本人や家族から緊急連絡先として聞いている相手くらいにしか連絡はできないのだろう。

このメモはそれを見越してのことなのか。
警察や他の大人達はメモに気づいたとしてもスルーされてしまう可能性もある。

紅華はきっと、琉真なら自分の意志を完璧に汲み取ってくれると理解していたのだろう。

たぶん紅華も、私の彼氏が琉真だってことに気づいていたのだと思う。
私達三人の中で重なる偶然の中にそんなことを見通すくらい、この二人なら容易いことなのかもしれない。

紅華の文字を初めて見た気がする。

こんな時にでさえ、私は紅華のことで知っていることが物凄く少なかったのだと痛感した。