僕の雨になって

何も分からないまま私はアプリからタクシーを予約して、いつもより雑に支度を済ませた。

両親はとっくに出勤していて家には私しか居なかったから好都合だった。
今の私の行動を、私だって説明できなかったから。

病院に到着すると、ロビーに繋がる入口の自動ドアの前にしゃがみ込んでいる琉真の姿が見えた。
タクシーのエンジン音に気づいて、ゆっくりと立ち上がってタクシーに近づいてくる琉真の足取りは、酷く疲れているように見えた。

運転手さんが後部座席のドアを開けてくれていたけれど
コン、コンと運転席側の窓をノックする琉真に応えるように、
窓がゆっくりと下ろされていく。

「ありがとうございました。おいくらですか」

乗車料金を支払って、お釣りを準備しようとしている運転手さんに「要りません」って琉真は言った。

走り去っていくタクシーを見送ってから、
歩き出す琉真についていく。

普段は通常の入口から入っていくけれど、まだ八時にもなっていなくて、
診察も開始していないフロアは外から見ても薄暗い。

琉真は迷わずに裏の通用口へと進んでいく。

「こっちから入れるの」

「病院の関係者とか入院患者に付き添ってる人専用の出入口だよ」

「そっか」