「やったあ。糸ちゃん、大成功」

「白いね」

「まだ明るいからね」

夜にしかやったことがない線香花火の火花は、
まだ沈んでいない太陽の下では白かった。

風に揺られながら、火花は点滅みたいに小さくなっていった。
紅華が作ってくれたカップの水桶に落ちることもないまま、
火玉は黒くなって線香花火は終わった。

「あ」

「どうしたの」

「代わりばんこでしか着火できないから二人でやれないね」

「共同作業だもん。一緒にやってるのと同じだよ」

「そっかぁ」

妙に納得した顔の紅華は結局四本を私にくれて、
自分は一本しかやらなかった。

二人で同時にできなくて良かったって思った。

「どっちのほうが長持ちするか」対決に発展してしまうに決まっているから。

もしも私が勝ってしまったら、
またずるい恋のお願いをしてしまうだろうから。

河原には他にも夕涼みをしている人達が居たし、
河川敷を何人もの人が通り過ぎたけれど
私達に声をかけてくる人は居なかった。

私達のちょっとルール違反の線香花火は、
誰にも叱られることがないまま静かに終わった。