線香花火を五本束に繋いでいる紙を千切って、
一本渡してくれた。

ピンクと黄色の細いこよりの先に、火薬が詰められていてぷくっと膨らんでいる。

「火、つけるよ」

「うん」

シュッとマッチを擦るこーちゃんの動作に見惚れてしまう。
二回擦ってついた火は、すぐに消えてしまった。

辺りにほんのりと火薬の香りが漂った。

「シケてんのかな」

「風があるしね」

「俺はめげないぞー」

「おー」

ついてはすぐに消えてしまった火を見て、
少し悲しくなった。

一瞬で死んでしまった、紅華への恋みたいだったから。

「糸ちゃん、花火準備しといてね。マッチがついたらすぐだよ!」

「うん。分かった」

側薬とマッチ棒が擦れる音がして、
ボッと火がついた。

「糸ちゃん」

「はいっ」

火の先に、風に揺られながら線香花火が触れて
チリチリとピンクの紙を燃やしながら、
次第に小さい火の玉を作って、パチパチと爆ぜた。