「それは嬉しいねぇ」

レジの前に座っているおばあちゃんがニコニコと私達を見ている。

レジ周りを木製の低い衝立(ついたて)で囲っていて、
閉め切られているガラス引き戸の向こうにはうっすらと居間が見える。

店全体が木製造りで、
「花火屋さん」だからなんだか心配になるけれど、
駄菓子屋さんとかそういう雰囲気を思い出してなんだか落ち着く空間だった。

「最近の若い子は花火でもお線香でもこういう香りを嫌がるでしょう。まだ好んでくれる若い世代が居ることは嬉しいねぇ」

「おばあちゃん、お店九月で閉まっちゃうの」

紅華が自分のおばあちゃんとお喋りするみたいに気さくに近寄った。

「もう夏が終わるからねぇ。シケやらなんやらあるだろ。後始末せんとな」

「そっかぁ。じゃあまた来年の夏だね」

「またおいで」