「へぇ。さっきの映画、旧約聖書に造詣が深かったらもっと楽しめるんだってさ」
紅華がスマホで考察サイトを見ながら言った。
「そっかぁ。私、聖書なんて手に取ったこともないや」
「俺も」
約束通り、二学期に入って二週目の日曜日。
紅華と映画を観た。
元々「映画を観る」って約束をしていたのに、
公開中の映画で絶対に観たい作品がどちらにも無かった。
日曜お昼の映画館はファミリーやカップル、
中高生の友達連れなどでそれなりに混雑していた。
観たい映画が決まっていなかった私達は、
自動発券機を前に、鑑賞する映画をゲーム感覚で決めた。
鑑賞日「本日」、大人二枚と進み、
映画のタイトルを選択する画面で紅華が目を瞑る。
「せーのっ」
紅華の人差し指がさした映画は、
私でも名前を知っている巨匠監督の最新作で、
生とか死とか虚像の愛だとか、
目には見えない本質を見抜いていく内容は少し難しかった。
洋画の字幕を目で追うのに必死だったような気もする。
だけどなんなとなく、紅華と初めて観た映画だから
私はこの作品を一生忘れはしないのだろうと思った。
鑑賞中、塩とキャラメルのハーフポップコーンを食べた。
まだ本編が始まる前で、
スクリーン全体がほんのりと明るかった。
「わ。ここキャラメルたっぷりだよ」
そう言った、ポップコーンをつまんでいる私の指先から紅華は直接食べた。
「ほんとだ。高級感」
人差し指の先に紅華のくちびるが触れた感触が火傷みたいに今も残っている。
あの映画館での私達は恋人同士に見えていたのだろうか。
それともただの、同性の友達に見えていたのかな。
誰が聞いても私の感情は「おかしくない」って言ってほしかった。
恋愛対象が男女のどちらだろうが、
人を好きになることにはさほど影響しないんだって。
紅華が女性だと知った今でも抑えられないドキドキはおかしくなんかないって誰かに言ってほしかった。
紅華がスマホで考察サイトを見ながら言った。
「そっかぁ。私、聖書なんて手に取ったこともないや」
「俺も」
約束通り、二学期に入って二週目の日曜日。
紅華と映画を観た。
元々「映画を観る」って約束をしていたのに、
公開中の映画で絶対に観たい作品がどちらにも無かった。
日曜お昼の映画館はファミリーやカップル、
中高生の友達連れなどでそれなりに混雑していた。
観たい映画が決まっていなかった私達は、
自動発券機を前に、鑑賞する映画をゲーム感覚で決めた。
鑑賞日「本日」、大人二枚と進み、
映画のタイトルを選択する画面で紅華が目を瞑る。
「せーのっ」
紅華の人差し指がさした映画は、
私でも名前を知っている巨匠監督の最新作で、
生とか死とか虚像の愛だとか、
目には見えない本質を見抜いていく内容は少し難しかった。
洋画の字幕を目で追うのに必死だったような気もする。
だけどなんなとなく、紅華と初めて観た映画だから
私はこの作品を一生忘れはしないのだろうと思った。
鑑賞中、塩とキャラメルのハーフポップコーンを食べた。
まだ本編が始まる前で、
スクリーン全体がほんのりと明るかった。
「わ。ここキャラメルたっぷりだよ」
そう言った、ポップコーンをつまんでいる私の指先から紅華は直接食べた。
「ほんとだ。高級感」
人差し指の先に紅華のくちびるが触れた感触が火傷みたいに今も残っている。
あの映画館での私達は恋人同士に見えていたのだろうか。
それともただの、同性の友達に見えていたのかな。
誰が聞いても私の感情は「おかしくない」って言ってほしかった。
恋愛対象が男女のどちらだろうが、
人を好きになることにはさほど影響しないんだって。
紅華が女性だと知った今でも抑えられないドキドキはおかしくなんかないって誰かに言ってほしかった。
