「ねーっ!もう毎日ダルいよー。明日からまた学校とかサイアク」

なんにも悪くない凪くんの背中をポカポカ叩きながら
時雨はずっとぶーぶー言っている。

被害者の凪くんはカラッとした笑顔で「まだ始まって一週間じゃん」って言いながら時雨をなだめている。

「糸はいいよねぇ。毎日楽しそうで」

私と琉真の前を歩いていた時雨が振り返って、凪くんが「そうなの?」って言った。

「恋煩い」

「別にわずらってないから」

「やだっ!琉真くん、もっと頑張んなきゃ!」

「マジかぁ」

「もー、みんなやめてよね。てか凪くんいいの?毎日つまんないって言われちゃってるよ」

「えーん。俺の愛が足りてないのかなぁ」

「ちょっと!つまんないのは学校だから」

「えーん。私の愛が足りてないのかなぁ」

「あっはは!糸が優勢ですねぇ」

「琉真くんがちゃんと躾けてよねっ!」

氷が溶けてほとんど甘いだけのシロップジュースみたいになってしまったかき氷を、
先がスプーンみたいに切り開かれたストローで吸って、
時雨は「あっまい」って顔をしかめた。