「飯行こうって約束だったんだけど、なんかそいつも恋人ができたとか言ってたなぁ。惚気メインになっちゃうかもとか言ってたよ。俺さ、あいつに心配ばっかかけてきちゃったから、あいつにも自分の為に幸せになってほしいんだよね。だから嬉しくて。思う存分ノロけさせてあげてきます」

「いいね!こーちゃんの周りで幸せが伝染してる。やっぱりこーちゃんは幸せメーカーさんだ」

「じゃあ次は俺の番かなぁ」

「うん、そうだね…」

お互いに好きだって気持ちを告白しているのに、
違う人との幸せを願い合うなんて変なの。

こういう瞬間にどうしても思ってしまう。

紅華が「生まれつき」男性で、
私も女のままで、世間から見て「普通」の私達だったら
なんの問題もなく紅華の彼女になれていたのだろうか、と。

でもそんなことを考えてしまう思考が悪のように思えて
必死で自分の中から掻き消す毎日だった。

大好きなのになんで、違う人との幸せを願い合わなきゃいけないのだろう。

「デートはしないの?」

「二学期が始まったら最初の日曜日に約束してるの。さっき決まったんだけどね。私達よりも親友カップルが張り切ってるの」

「あはは。楽しんでおいでね」