〝何で手紙なのって思ったでしょ。今から話すね。少し重たい話になるから、先に謝っとく。ごめん。

俺、実は病気で、もう長くないんだ。というか、もうこの世に居ないと思う。もう一回ぐらい会いに行きたかったけど、外出許可が病院からおりなくて、きっと行けないなって分かったから、手紙にしてる。

ガンでさ。見つかった時には末期だったから、治療は痛み止め打つぐらい。最近食欲なくて、病院で出たご飯とふりかけでおにぎり作って無断で持ち出して、君にあげたりもした。

水島コンビナートは昔から好きで、車で夜景見に来てて、でも病気になって行けなくなって。どうしても見に行きたいって言ったら、月に一回体調が良かったら、許可出すって言ってもらえて。



なかなか君に会えなくて寂しい思いさせたけど、二回は会えたよね。この間会った時、君が本当に恋しかった。嬉しくて、やっと会えたって思ったけど、君は泣いちゃって。もう泣かせちゃいけないなって思ったから、次も会えるように病気に勝とうって頑張った。でもダメだった。

今はまだ手紙を書く気力もあるけど、一週間後には字も書けなくなるし、起きれてない。まだ字が書ける間に、君に気持ちを伝えたくて。

名前、聞いてなかったし、俺も言わなかったけど、それでも大好きだった。君のことが大好きで、毎日会いたかった。ちゃんと好きだって伝えたかった。夜景を見ながら、君とご飯を食べてコーヒーを半分こして。あの時間が、俺にとっては忘れられない、幸せな思い出になった。もう一度だけ、会いたかった。君は俺のこと、好きでいてくれてたかな。

またどこかで会えたら良いね。またね。〟




手紙を捲る手は止まらず、三枚目まで全て読み切った。


涙も嗚咽も止まらなくて、手紙が涙で濡れてしまった。



弟から差し出されたハンカチを、受け取って拭いても、止まらない。