次会う約束はせず、あの場所でいつか会えると信じて、二週に一回のペースで水島コンビナートに行った。


好青年がいつ来ているか、来る周期があるのか知らないし、偶然に任せるだけ。




当然、その偶然はなかなか重ならず、以前会えなかった時よりも会えない日が増えていく。


確実にすれ違っている。




でもあの日、好青年と気持ちを確かめ合えたから、寂しさはあまりない。



きっと会える。いつか会える。




「…やっぱり連絡先、欲しかったな」




いつか会えると信じて、半年。


一人、水島コンビナートの夜景を眺めながら、朝日が昇るのを待ち、好青年が現れるのを待ち。




連絡手段が豊富になかった昔、どうやって会いたい人に会っていたんだろうと、不思議に思う。


この駐車場のどこかに、掲示板でも設置してもらえたらな。




紫色の空を見ながら、駐車場のいつもの車輪止めに腰を下ろした。




今日は空が暗くなりかけの、トワイライトの時間帯に来てみたけど、変わらず居なくて、夕日を眺めるカップルが一組居た。





「また来ようね」


「うん。絶対ね」


「来月にする?」






あのカップルは、見える未来の約束か。


羨ましい。



会いたいと言えば飛んできてくれて、声だけでもすぐに聞ける関係性。




遠目にカップルを見て、私たちはいつになったら会えるだろうと、会えた時のシュミレーションを頭の中で描く。


飛びついてみる?

でも、びっくりされるだろうから、とりあえず満面の笑みで手を振ってみる?




いくつものシュミレーションをして、幸せで満たした。




今日も会えないまま、自転車で三時間の旅をするのかな。




「帰ろうか。寒くない?」


「うん。綺麗だったね」




ついに一組居たカップルも車に入ってしまい、車の中で数分間何やら幸せそうに話して、帰ってしまった。





「また一人になっちゃった…」




この場所は綺麗だけど、観光地ではないから、人は常にまばら。


知る人ぞ知る、といったところだろうか。



私も、自転車を漕ぎ続けて疲れたところで出会った場所だから、穴場だと思う。




こんな綺麗な場所を見つけられて、私のタイプの青年にも出会えて、幸せだ。



あとは好青年に会えれば、問題なし。