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数年後――。
「お母様〜!」
四歳くらいの可憐な少女が元気よく、綺麗な着物に身を包んだ二十代前半の女性に抱きついた。
「あらあら、どうしたの、雪乃?何かあった?」
黒髪の綺麗な女性は、雪乃と言う名の少女に優しく声をかける。
「あっちにさっきね!綺麗な白猫がいたの……。あれ?でも、もういなくなっちゃった」
残念そうに肩を落とす少女はキョロキョロと辺りを見回した。
「……まぁ、そうなの?そんなに綺麗な猫なら、お父様にも見せてあげたいわね。でも、またきっと来てくれるわ。さ、そろそろお部屋に戻りましょうか」
「はーい、お母様」
一瞬、少女が指す方向を見つめたその女性は、懐かしそうに目を細める。そして、そう言葉を残し、優しく少女の手を引くと、屋敷へと戻って行く。
そんな二人の後ろ姿を綺麗な白猫が尻尾を振り、遠目から見つめていた――。



