だけどショックで最初は声が出なかった。
「や、やめて」

か細く弱弱しい声が漏れ出た。
それを見たミツが鼻で笑う。
「あんたの顔を見てるとイライラするのよ!」

ミツは暴言を吐きながら何度も何度も千尋の頭から水を浴びせた。
それは自分がワンピースを着れなかったことへの八つ当たりに過ぎないが、本人に指摘したところで逆効果だということを、千尋はすでに知っていた。

間違っていない指摘をしたとしてもミツは認めることなく、更に千尋をしいたげてくる。
それが、ここに来たときからの日常となっていた。

こんなことになるならずっと孤児のままでよかった。
ずぶぬれになりながら千尋は考える。