どうして邪魔をしたんだとののしりたくなり、グッと拳を握りしめて耐えた。
「僕は君にもう一度会えてよかったと思ってる」
男の言葉に千尋は小さく息を吐きだした。

どうせこの男も自分の顔だけで声をかけてきたに違いない。
どれだけ年齢が離れていようと、千尋の美貌を前にすると下心が生まれるらしい。

千尋はすでにそのことを学んでいたし、それは義理母にとって思惑通りのことでもあった。
「君は、僕の娘を知っているよね?」
以外な質問に千尋は言葉を失い、男を見つめたのだった。

☆☆☆

ほいほいと男の宿について来てしまったのはさっきの言葉がどうしても気になったからだった。