ぐずぐずと座り込んでいた千尋が立ち上がると、白い包帯に赤い血が滲みだしてきていた。
適当な手当では血は止まらなかったらしい。

それでも千尋は気にすることなく助けを求めるように濁流の川へと近づいていく。
夜に見る川は真っ黒で、まるでタールを飲み込んだようだった。

それを見つめる千尋の頬が緩んで口角が持ち上がった。
ふふっと笑い声まで聞こえてきてまた一歩川に近づく。

このタールのような川に身を投げればきっと楽になれる。
もうミツからイジメられることもなく、義理母から男を誘うように言われることもない。

それがとても魅力的なことのように感じられてまたふらりと前へ出た。