「でも」
それでもためらっている間に、人の目が気になってきた。
こんな道端で何をしているのだろうかと立ち止まる人もいる。

とたんに路地裏に立たされるときの感覚がよみがえってきて、千尋は視線から逃げるように素早く靴に足を通した。
スラリと長くて白い足に、白い靴がすんなりとおさまる。

それは恐ろしいほどに千尋の足にピッタリだったのだ。
「うん、よく似合う」
男が満足そうに微笑む。

少し歩いてみると下駄よりも低くて地面をそのまま歩いているような感じがした。
でも嫌じゃない。
西洋の素敵な靴が今自分の足元にあるということが不思議でならなかった。

「それじゃ。僕はこれで」