こうしておいしい食事に舌鼓を打つだけ十分幸せではないかと思うが、ミツはそうではなかった。
「今私を見て笑ったわね」

食事を途中にして千尋の前に仁王立ちになるミツ。
千尋はなにをされるだろうかとすでに体を小刻みに震わせている。

「いえ、笑ってなんて……」
「言い訳はよして！！」

パンッと頬を打つ音が響き、千尋の右頬に電光石火の痛みが走り抜けて横倒しになった。
一瞬目の前が真っ白になってそれから徐々に色が戻ってきた。

ミツがいつも通り真っ赤な顔をして千尋を見下ろしている。
義理母は興味がなさそうにまだ雑誌の男を眺めていた。

「ちょっと綺麗だからって！！」
再びミツの手が振り上げられる。