義理母の部屋で呆然と座り込んでいるとミツが追いかけてやってきた。
その顔は赤鬼のように真っ赤に染まり、鼻息も荒い。

頬に散ったソバカスまでもが千尋に脅威を見せているような錯覚に陥りめまいがした。
「ひっ」

千尋が短く悲鳴を上げた原因はミツの右手に銀色に光る包丁を見たからだった。
包丁の切っ先は当然のように千尋へ向けられている。

それは千尋は今朝研いだばかりのものだ。
「私のことを笑いものにしやがって! ちょっと綺麗だからって調子にのりやがって!」

ミツが両手で包丁を握りしめる。
ミツは本気だ。

千尋がそう感じたときには包丁が頭上へと振り上げられていた。
「その忌々しい顔を切り裂いてやる!!」