一度口からあふれ出た空気はどんどん抜けていき、一気に肺の中の酸素が薄くなった。
焦って両手をバタつかせればミツがそれを見て喜ぶ。

だけどいくら怪力のミツでもずっと力込め続けていることはできなかった。
少し力が抜けた瞬間に千尋は自分の力でミツを押しのけて風呂場から脱出したのだ。

せき込んで倒れる暇もなく、濡れたまま廊下を駆け抜けて母親がいる部屋へと飛び込んだ。
卓上に雑誌を広げて物憂いな表情をしていた義理母が驚いた顔を千尋へ向ける。

千尋は必死に空気を吸い込みながら「助けてください」と懇願する。