私がそう訊ねると、彼らは黙って顔を見合わせる。そして中年男性が首を横に振った。「そんなもんないよ……。もともとデータセンターに向かってたんだけど、途中でモンスターに出くわして散り散りになった。仲間も失っちまったし……」
「データセンター……?」
私は思わず言い返す。確かにこの世界をどうにかするためには、運営のサーバーなりシステムの中枢なりにアクセスすればいいんじゃないかって話は聞いたけど、具体的にどうするかは全然わからなかった。もしかして、彼らはそれを調べるために行動してたのか?
「けど、もうそれどころじゃない。足も痛いし、仲間もやられた。畜生……」
先頭の青年は自暴自棄になったように拳を地面に叩きつける。見るに耐えないけど、その気持ちはわかる。私だって大切な友達がやられたら正気を保てる自信がない。この世界が変わっちゃって、どうしようもない絶望感が押し寄せてきても仕方ない。
一方で、ここで行動を共にするかどうかが問題だ。どうやら彼らは複数人いたみたいだけど、今は三人になってる。しかも怪我人もいる。こっちも私たち含めて怪我人が一人、さらにあんまり体力もない。人数が増えれば戦力は上がるかもしれないけど、食料や水の問題も深刻になる。ハルさんが私を見つめ、「どうする?」という無言の合図を送ってくるのがわかる。
「……とにかく、私たちは拠点に戻らないと。あなたたちもケガしてるなら、一緒に来ます? 正直、安全とは限らないし、食料だって十分じゃないですけど、路上でモンスターに襲われるよりはマシかもしれない」
意を決してそう提案してしまった。一瞬、ハルさんが驚いたように眉を動かしたけど、「まぁ、嫌なら別行動すればいいだけだしな」と小さく呟く。彼らははっとした顔で、食料だって十分じゃないと言われて表情を曇らせるが、それでも協力して乗り切る方が生存率は高いんじゃないかと察したのか、互いに目を合わせながら頷く。
「助かる……。でも、本当に迷惑かけるだけかもしれない」
「それでも、一人よりはいいと思います。ここで別れるのも怖いですし……」
私が下を向くと、先頭の青年も「……悪いな、頼るしかない」とうなだれる。こうして急遽、私たちは“砂糖容器+怪我人+さらに3人”を抱え込むことになった。ハルさんは苦い顔をしながら「人数が増えて音が大きくなる。襲われるリスクは高まるぞ」と一応警告する。でも彼らは構わない、とばかりに縋り付く。そりゃそうだ、私たちがモンスターを倒してくれたからこの場は生き延びられたんだ。まだ希望があると思うだろう。
とはいえ、今後どうなるかわからない。不安は大きい。それでも私の中には「助かってよかった」という安堵の気持ちもあるし、せっかく人数が増えたなら、情報交換だってできるかもしれない。何より、こんな地獄みたいな廃墟でも、人と助け合うことで生き抜ける可能性が上がる──と信じたいから。
「じゃあ、急ぎましょう。日が落ちる前に何とか……」
私が号令するように言うと、みんな腰を上げ、怪我人たちを支え合う体勢をとる。モンスターの亡骸から離れるように路地を辿り、遠回りになっても安全そうなルートを選ぶ。道中、不安な沈黙が何度も訪れるけど、誰も何も言わない。下手に声を出してモンスターを呼び寄せたくないからだ。
私の足元には容器の砂糖が多少こぼれ、粉々になって舞っている。あんなに必死で見つけた砂糖を贅沢に使い果たしたけど、それで命が助かったなら、多少のロスはしょうがない。残りの容器にまだいくらか残っているはず。それを持って拠点に帰り、何とかみんなで分け合おう。とにかく、今は無事に帰ることだけを考えろ──そう自分に言い聞かせ、私はまた足を動かす。
加わった三人と、私たちの怪我人、さらにハルさん。数が増えすぎたこのパーティを率いて、廃墟の路地を進むのは本当に苦行に近い。でも、心なしか“一人で死ぬかもしれない”という孤独感は和らいだ気がする。果たして拠点でどう生活するのか、食糧はどう確保するのか、それ以上に私たちに未来はあるのか──わからないことだらけだけど、弱音を吐く暇はない。
こんなにも必死に“生き残る”ために行動するだなんて、想像もしなかった。ファンシーでポップな世界を楽しむはずが、廃墟と化した地獄をサバイバルしてる現実。いつか本当に終わりが来るのか。いつかはまた、元の可愛い姿を取り戻す日が来るのか。暗い疑問が頭を支配しそうになるたび、“今やるべきこと”に意識を集中させ、私は前を向く。後ろを見ても仕方がない。誰一人として、ここで倒れちゃいけないんだから。
──帰り道はまだ遠い。空が赤黒く染まりはじめ、次第に暗い闇が町を覆っていくのを感じる。急がないと、夜のモンスターが這い出してくるかもしれない。怖い。だけど走れない。唇を噛み、心臓の鼓動を感じながら、私は必死で足を前へ運んだ。皆で生きるために、ただそれだけを目指して。
「データセンター……?」
私は思わず言い返す。確かにこの世界をどうにかするためには、運営のサーバーなりシステムの中枢なりにアクセスすればいいんじゃないかって話は聞いたけど、具体的にどうするかは全然わからなかった。もしかして、彼らはそれを調べるために行動してたのか?
「けど、もうそれどころじゃない。足も痛いし、仲間もやられた。畜生……」
先頭の青年は自暴自棄になったように拳を地面に叩きつける。見るに耐えないけど、その気持ちはわかる。私だって大切な友達がやられたら正気を保てる自信がない。この世界が変わっちゃって、どうしようもない絶望感が押し寄せてきても仕方ない。
一方で、ここで行動を共にするかどうかが問題だ。どうやら彼らは複数人いたみたいだけど、今は三人になってる。しかも怪我人もいる。こっちも私たち含めて怪我人が一人、さらにあんまり体力もない。人数が増えれば戦力は上がるかもしれないけど、食料や水の問題も深刻になる。ハルさんが私を見つめ、「どうする?」という無言の合図を送ってくるのがわかる。
「……とにかく、私たちは拠点に戻らないと。あなたたちもケガしてるなら、一緒に来ます? 正直、安全とは限らないし、食料だって十分じゃないですけど、路上でモンスターに襲われるよりはマシかもしれない」
意を決してそう提案してしまった。一瞬、ハルさんが驚いたように眉を動かしたけど、「まぁ、嫌なら別行動すればいいだけだしな」と小さく呟く。彼らははっとした顔で、食料だって十分じゃないと言われて表情を曇らせるが、それでも協力して乗り切る方が生存率は高いんじゃないかと察したのか、互いに目を合わせながら頷く。
「助かる……。でも、本当に迷惑かけるだけかもしれない」
「それでも、一人よりはいいと思います。ここで別れるのも怖いですし……」
私が下を向くと、先頭の青年も「……悪いな、頼るしかない」とうなだれる。こうして急遽、私たちは“砂糖容器+怪我人+さらに3人”を抱え込むことになった。ハルさんは苦い顔をしながら「人数が増えて音が大きくなる。襲われるリスクは高まるぞ」と一応警告する。でも彼らは構わない、とばかりに縋り付く。そりゃそうだ、私たちがモンスターを倒してくれたからこの場は生き延びられたんだ。まだ希望があると思うだろう。
とはいえ、今後どうなるかわからない。不安は大きい。それでも私の中には「助かってよかった」という安堵の気持ちもあるし、せっかく人数が増えたなら、情報交換だってできるかもしれない。何より、こんな地獄みたいな廃墟でも、人と助け合うことで生き抜ける可能性が上がる──と信じたいから。
「じゃあ、急ぎましょう。日が落ちる前に何とか……」
私が号令するように言うと、みんな腰を上げ、怪我人たちを支え合う体勢をとる。モンスターの亡骸から離れるように路地を辿り、遠回りになっても安全そうなルートを選ぶ。道中、不安な沈黙が何度も訪れるけど、誰も何も言わない。下手に声を出してモンスターを呼び寄せたくないからだ。
私の足元には容器の砂糖が多少こぼれ、粉々になって舞っている。あんなに必死で見つけた砂糖を贅沢に使い果たしたけど、それで命が助かったなら、多少のロスはしょうがない。残りの容器にまだいくらか残っているはず。それを持って拠点に帰り、何とかみんなで分け合おう。とにかく、今は無事に帰ることだけを考えろ──そう自分に言い聞かせ、私はまた足を動かす。
加わった三人と、私たちの怪我人、さらにハルさん。数が増えすぎたこのパーティを率いて、廃墟の路地を進むのは本当に苦行に近い。でも、心なしか“一人で死ぬかもしれない”という孤独感は和らいだ気がする。果たして拠点でどう生活するのか、食糧はどう確保するのか、それ以上に私たちに未来はあるのか──わからないことだらけだけど、弱音を吐く暇はない。
こんなにも必死に“生き残る”ために行動するだなんて、想像もしなかった。ファンシーでポップな世界を楽しむはずが、廃墟と化した地獄をサバイバルしてる現実。いつか本当に終わりが来るのか。いつかはまた、元の可愛い姿を取り戻す日が来るのか。暗い疑問が頭を支配しそうになるたび、“今やるべきこと”に意識を集中させ、私は前を向く。後ろを見ても仕方がない。誰一人として、ここで倒れちゃいけないんだから。
──帰り道はまだ遠い。空が赤黒く染まりはじめ、次第に暗い闇が町を覆っていくのを感じる。急がないと、夜のモンスターが這い出してくるかもしれない。怖い。だけど走れない。唇を噛み、心臓の鼓動を感じながら、私は必死で足を前へ運んだ。皆で生きるために、ただそれだけを目指して。
