あの空~初恋に気づいたあの日へ

「初写真集発売、おめでとうございます!この表紙に一目惚れした時から、ずっとファンなんです!」

「ありがとうございます」

熱視線を送ってくる女性に、気後れしつつ、
買ってくれただろう写真集に慣れないサインをする。

サインを受け取った女性は満面の笑みを浮かべて去っていく。

並んでくれている人達の為に、次々とサインをする。
この動作を繰り返すこと、2時間。
やっと終わり、休憩室として充てられた会議室みたいなところへと戻る。

窓際に立ち、習慣化しているタバコを吸う。
やっと終わったと感じながら、吸ってると、

「あまり吸わないでくださいよー。この部屋は基本禁煙なんですから。今日は特別にと許可は取ってますが。」

そう注意してくるのは、この写真集の企画・運営を担当している吉永さんだ。

「2時間も慣れないことをしたんですから、多少は目をつぶってくださいよ。もうサイン会は懲り懲りですね。」

嗅ぎなれた匂いに安心しながら、また吸う。

「そんなこと、言わないでくださいよー。藤井さんの作品を見たい人は多いんですよ?今回の写真集だって、めっちゃ話題になったのに!」

クレームを言いつつ、俺宛ての手紙、プレゼントをまとめてくれている。

「藤井さんは、もう少し自信を持ってくださいよ!大人気カメラマンなんですよ??」

-そう言われても、しがないカメラマンなんだよな…

付き合いの長い吉永さんに言われても、実感はない。

高校時代に趣味としてやっていたカメラが、まさか仕事になっていくとは思っていなかったんだ。

他人からの評価をイマイチ好意的に感じれないのは、
自分が世に出るきっかけになった写真のせいかもしれない