その日、家に帰った俺は、クローゼットの奥にしまった箱を取り出した。蓋を開けると、黄色のサッカーシューズが現れる。
中学時代に毎日履いてくたびれさせて、それでも綺麗に手入れしていたシューズだった。
俺はそっと、そのシューズを手に取った。
――トラウマを乗り越えて自分を変えるか。
胸の内には、サトセンの言葉が残っている。
(変われるのかな。こんな俺でも)
サッカーから逃げ出して、それでも諦め切れずに中途半端に続けてしまって、結果パニックになった情けない俺でも、自分を変えることができるのだろうか。
(変わったら……また悠理の隣にいれるかな)
正直それはわからなかった。悠理はもう、俺以外の人――例えば、この前告白されていた猪原さんとの新しい毎日を手に入れているかもしれない。俺の入る場所なんて、もう残っていないかもしれない。
(……まあ、それもそれで仕方ないよね)
離れたのは俺からだ。悠理がどんな選択をしていても、俺が何かを思う権利なんてない。
それでも、俺が変わったなら。
――昔と変わってなくて安心する。
――最高のチームメイトだった。
悠理がくれたあの言葉たちに、胸を張って頷ける自分になれるかもしれない。
(引っ込み思案だった昔の悠理は変わった。なら俺も、悠理に負けないように変わりたい)
ぎゅっと、サッカーシューズを抱きしめる。そしてスマホを取り出し、メッセージアプリを立ち上げた。
***
中学時代に毎日履いてくたびれさせて、それでも綺麗に手入れしていたシューズだった。
俺はそっと、そのシューズを手に取った。
――トラウマを乗り越えて自分を変えるか。
胸の内には、サトセンの言葉が残っている。
(変われるのかな。こんな俺でも)
サッカーから逃げ出して、それでも諦め切れずに中途半端に続けてしまって、結果パニックになった情けない俺でも、自分を変えることができるのだろうか。
(変わったら……また悠理の隣にいれるかな)
正直それはわからなかった。悠理はもう、俺以外の人――例えば、この前告白されていた猪原さんとの新しい毎日を手に入れているかもしれない。俺の入る場所なんて、もう残っていないかもしれない。
(……まあ、それもそれで仕方ないよね)
離れたのは俺からだ。悠理がどんな選択をしていても、俺が何かを思う権利なんてない。
それでも、俺が変わったなら。
――昔と変わってなくて安心する。
――最高のチームメイトだった。
悠理がくれたあの言葉たちに、胸を張って頷ける自分になれるかもしれない。
(引っ込み思案だった昔の悠理は変わった。なら俺も、悠理に負けないように変わりたい)
ぎゅっと、サッカーシューズを抱きしめる。そしてスマホを取り出し、メッセージアプリを立ち上げた。
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