瑠璃奈は婚約者と些細なことで喧嘩をしむしゃくしゃしていた。
苛立ちながら廊下を歩く瑠璃奈は、この鬱憤を晴らそうを七海の部屋に向かっていた。
あの化け物みたいな髪と目を持って、自分が欲しくてたまらなかった癒しの異能を持った七海の存在がどうしても許せなかった。
瑠璃奈は冬の巫女として愛される存在で、七海は蔑まれる存在。それだけでは飽き足らず、彼女から全てを奪い一生自分達の道具として死ぬまで使い続けてやると考えていた。
だが、今まで瑠璃奈達には七海の妹の絵梨の命という切り札があったのだが、ある出来事によってその切り札が使えなくなってしまったことも苛立ちを更に助長させていた。しかも、四季神が絡んでいるという。
村は四季神の加護によって生かされている。その加護がなくなってしまったら一気に廃れて村は死んでしまう。
同時に、冬の巫女は癒しの異能だけでなく、赤い髪と翠緑色の瞳も証の一つであるという噂も聞いてしまっていたのだ。
全ての条件が揃っている七海こそ真の冬の巫女だと証明されたようなものだった。
(この事がみんなにバレたら追放されちゃう!!!私を見下すに決まってるわ!!!!なんなのよ!!姉妹揃って私達を馬鹿にして!!)
生まれてからずっと冬の巫女として皆に慕われ、地位と富を得ていた。だが、絵梨の一件と噂のせいでそれが崩れ始めてきている。
今はこの苛立ちを七海に全て八つ当たりとして晴らしてやると彼女がいるであろう部屋に急いだ。
七海の部屋の引き戸に手をかけようとした時だった。戸の向こうから聞こえないはずの男の声がしたのだ。
驚いた瑠璃奈はそっとほんの少しだけ戸を開け部屋を見ると、目に飛び込んできたのは、肩まで黒い髪を伸ばし、薄い灰青色の瞳を持った美しい男の横顔。
(だ、誰なの?!こんなに美しい人初めて見た…)
見つかってしまう危険があるというのに瑠璃奈は男に見惚れてしまった。
あまりの美しさに瑠璃奈の心はすぐに奪われてしまったが、すぐにその心は打ち砕かれた。
男の目線の先に瑠璃奈が最も嫌う女がいたからだった。
瑠璃奈には向けられることのない男の優しげで愛おしいものを見る様な眼差しはよりにもよってあの七海に向けられていたからだ。
(なんでアイツをその目を向けるの?)
とても初めて会った様な感じではない。何度も逢瀬を繰り返していた様子だった。
大切な物を扱うように七海の赤い髪に触れ、彼女の翠緑色の瞳を愛おしそうに見つめる。
男は幸せそうに七海を抱き、七海も彼の愛に応える様に背中に手を回していた。
(どうしてあの女なの…?!)
七海に対して理不尽な悪意を向けようとした時だった。
男がギロっと目を瑠璃奈に向けてきたのだ。その目は七海に向けていた慈しむ目ではなく、強い殺意がこもった目で瑠璃奈を睨みつけてきたのだ。
瑠璃奈は思わず「ひぃ」っと小さく悲鳴を上げ急いでその場から逃げ出した。
(なんなのあの男。私にあんなの目を向けるなんて…!!!でも…あの青い目って…確か…)
あの男の薄灰青色の瞳。冬神しか持たないといわれる特別な目だと聞いた事があった。
冬を司る神のみが与えられた宝石の様な瞳。
もしそれが本当だとしたら、七海と逢瀬を繰り返していたのは冬神ということになる。
そして、冬の巫女のみが持つ癒しの異能を七海が持っているというのなら。
「あの女が冬神様の花嫁だと言いたいわけ…?」
自室に戻ってきた瑠璃奈はその真実を受け入れられず、怒りのあまり置いてあった白い花瓶を思いっきり壁に叩きつけた。花瓶は乾いた音と共に砕け散り残骸が床に散乱した。
「あんな化け物女が冬の巫女なわけないでしょ!!私から全てを奪っておいて、あの方の花嫁になるなんて絶対に許さないぃぃ…!!!!」
取り乱した瑠璃奈は冬神を自分のものにし、七海達姉妹を陥れてやると躍起になった。その姿は狂気そのもの。
けれど、男が瑠璃奈に向けた殺意は氷の様に冷たい呪いの棘となって突き刺さっているのを彼女はまだ知る由もなかったのだった。
苛立ちながら廊下を歩く瑠璃奈は、この鬱憤を晴らそうを七海の部屋に向かっていた。
あの化け物みたいな髪と目を持って、自分が欲しくてたまらなかった癒しの異能を持った七海の存在がどうしても許せなかった。
瑠璃奈は冬の巫女として愛される存在で、七海は蔑まれる存在。それだけでは飽き足らず、彼女から全てを奪い一生自分達の道具として死ぬまで使い続けてやると考えていた。
だが、今まで瑠璃奈達には七海の妹の絵梨の命という切り札があったのだが、ある出来事によってその切り札が使えなくなってしまったことも苛立ちを更に助長させていた。しかも、四季神が絡んでいるという。
村は四季神の加護によって生かされている。その加護がなくなってしまったら一気に廃れて村は死んでしまう。
同時に、冬の巫女は癒しの異能だけでなく、赤い髪と翠緑色の瞳も証の一つであるという噂も聞いてしまっていたのだ。
全ての条件が揃っている七海こそ真の冬の巫女だと証明されたようなものだった。
(この事がみんなにバレたら追放されちゃう!!!私を見下すに決まってるわ!!!!なんなのよ!!姉妹揃って私達を馬鹿にして!!)
生まれてからずっと冬の巫女として皆に慕われ、地位と富を得ていた。だが、絵梨の一件と噂のせいでそれが崩れ始めてきている。
今はこの苛立ちを七海に全て八つ当たりとして晴らしてやると彼女がいるであろう部屋に急いだ。
七海の部屋の引き戸に手をかけようとした時だった。戸の向こうから聞こえないはずの男の声がしたのだ。
驚いた瑠璃奈はそっとほんの少しだけ戸を開け部屋を見ると、目に飛び込んできたのは、肩まで黒い髪を伸ばし、薄い灰青色の瞳を持った美しい男の横顔。
(だ、誰なの?!こんなに美しい人初めて見た…)
見つかってしまう危険があるというのに瑠璃奈は男に見惚れてしまった。
あまりの美しさに瑠璃奈の心はすぐに奪われてしまったが、すぐにその心は打ち砕かれた。
男の目線の先に瑠璃奈が最も嫌う女がいたからだった。
瑠璃奈には向けられることのない男の優しげで愛おしいものを見る様な眼差しはよりにもよってあの七海に向けられていたからだ。
(なんでアイツをその目を向けるの?)
とても初めて会った様な感じではない。何度も逢瀬を繰り返していた様子だった。
大切な物を扱うように七海の赤い髪に触れ、彼女の翠緑色の瞳を愛おしそうに見つめる。
男は幸せそうに七海を抱き、七海も彼の愛に応える様に背中に手を回していた。
(どうしてあの女なの…?!)
七海に対して理不尽な悪意を向けようとした時だった。
男がギロっと目を瑠璃奈に向けてきたのだ。その目は七海に向けていた慈しむ目ではなく、強い殺意がこもった目で瑠璃奈を睨みつけてきたのだ。
瑠璃奈は思わず「ひぃ」っと小さく悲鳴を上げ急いでその場から逃げ出した。
(なんなのあの男。私にあんなの目を向けるなんて…!!!でも…あの青い目って…確か…)
あの男の薄灰青色の瞳。冬神しか持たないといわれる特別な目だと聞いた事があった。
冬を司る神のみが与えられた宝石の様な瞳。
もしそれが本当だとしたら、七海と逢瀬を繰り返していたのは冬神ということになる。
そして、冬の巫女のみが持つ癒しの異能を七海が持っているというのなら。
「あの女が冬神様の花嫁だと言いたいわけ…?」
自室に戻ってきた瑠璃奈はその真実を受け入れられず、怒りのあまり置いてあった白い花瓶を思いっきり壁に叩きつけた。花瓶は乾いた音と共に砕け散り残骸が床に散乱した。
「あんな化け物女が冬の巫女なわけないでしょ!!私から全てを奪っておいて、あの方の花嫁になるなんて絶対に許さないぃぃ…!!!!」
取り乱した瑠璃奈は冬神を自分のものにし、七海達姉妹を陥れてやると躍起になった。その姿は狂気そのもの。
けれど、男が瑠璃奈に向けた殺意は氷の様に冷たい呪いの棘となって突き刺さっているのを彼女はまだ知る由もなかったのだった。



