自分さえいなければ、きっと誰も死ななかった。

自分さえいなければ、友達が死ぬこともなかった。

自分さえいなければ、優しい人々が苦しむことはなかったのだ。

ごぼり。
ずるり。
どしゃり。

音を立てて、巨大な水の塊から村人達が落ちてくる。

全員、顔が青い。生気がない。息をしていない。

水に漬けたぬいぐるみのように、だらりと放り出された手、足。

誰一人として、動くものはいない。

(あ……)

その中に、ティファナがいた。

いつもと同じ生成りの前掛けが、濡れそぼって灰色になっている。

その下に、ウルドゥがいた。

普段は縛っている髪がほどけて、白髪が肩にばらけていた。

エバも、バルドも、ガストも、他の村人も。
折り重なるように、彼女が知っている、彼女に優しくしてくれた、みんなが、落ちてきた山の中にいた。

「あ……ああっ、あ……ああああああああっ」

―――ちり。

―――音がする。

―――ぱち。

―――爆ぜる。

―――火が。

―――ぼう、と。

燃え―――あが―――る―――

「っあああああああああああああああ!!」

身体中の

「あああああああああああああああ!!」

全身の

「あああああああああああああああ!!」

血が

「あああああああああああああああ!!」

沸騰、

「あああああああああああああああ!!」

した―――







喉を引き裂くような声は、はたして怒りの咆哮だったのか。

それとも【彼女】が泣き叫ぶ声だったのか。

―――定かではない。