そこに幼稚園くらいの小さな男の子と手を繋いだお母さんが歩いてきて、赤信号で停まった。
その横をサラリーマン、OL風の女性、自転車に乗ったおじいちゃん。
車の往来をしっかり確認もしないで、みんな赤信号でも渡っていく。
幼い子どもの見てる前で良くないな……。
眺めながら少しムッとしていると、一人だけ赤信号で立ち止まった人物が居た。
あれは2年の椎名先輩だ。
椎名 万威先輩のことはみんなが騒いでたし、私も廊下で擦れ違った時はテレビでも見たことのないような完璧な美形が居るんだなって驚いた。
180センチ近い長躯。細身なのに、ひょろっと頼りない訳じゃなくて、かといって筋肉質なマッチョってわけでもなく全てがちょうどいい。
色素の薄い髪はサラサラで、二重だけど鋭い眼差しをいつも気怠そうに細めている。
かっこつけてないのにかっこよくて、高校生特有の浮ついた感じもなくて、何だか色気もある。
まだ通い始めたばかりの桜高のことはよくわからないけど、椎名先輩の存在感とオーラは、きっと抜きん出てると思う。
あの椎名先輩がちゃんと信号を守るなんて……。
幼い子どもの前だから?
それとも赤信号だから?
どちらにしても意外と言えば意外。
私の目は椎名先輩に釘付けになっていた。
男の子を連れたお母さんも椎名先輩の美貌に見惚れている。
椎名先輩は自分を鑑賞したければご自由にとでも思っているのか、人の目を意識して力が入ることもなく、何もかも動作が自然。
……かっこいいな……。
あれ……?
椎名先輩。こっちに向かって歩いてきてない?
心持ち、頭を低くする。
やっぱり、こちらに向かって長い足を運んでいる。
椎名先輩、このコンビニに入るのかな?
どうしよう……。
ドキドキと悪戯に胸が高鳴ってとびだしそうだ。
椎名先輩はコンビニを通り過ぎ駐車場に停められていたバイクに近づきフルフェイスのヘルメットを被った。
あのかっこいいバイク、椎名先輩のなんだ……。
しかも、バイクで通学してたなんて。
椎名先輩の秘密を覗いてしまって、鼓動は加速するばかり。
椎名先輩は私たちより先にバイクを走らせて消えてしまった。
不良……なのかな?
あのバイク、何だかいかつかったし。
でも、乗りこなしていて、椎名先輩に似合っていてかっこよかった。
「吏那、どうした? 顔が赤くないか?」
「な、何でもないよ! お兄ちゃん」
車に戻ってきたお兄ちゃんには何故か秘密にしておきたくなった。
この時から私は憧れだけだった椎名先輩がもっと気になってしまい、この感情を好きだというのだと気づいた。
無謀な恋だとは自分で一番よくわかっている。
遠くからでも椎名先輩を見られた日は嬉しくて、椎名先輩を見られるかもって期待だけで学校に行っていた。
いつの間にか苦痛なだけだった学校が椎名先輩を見られる場所へと意味合いを変えていた。
その横をサラリーマン、OL風の女性、自転車に乗ったおじいちゃん。
車の往来をしっかり確認もしないで、みんな赤信号でも渡っていく。
幼い子どもの見てる前で良くないな……。
眺めながら少しムッとしていると、一人だけ赤信号で立ち止まった人物が居た。
あれは2年の椎名先輩だ。
椎名 万威先輩のことはみんなが騒いでたし、私も廊下で擦れ違った時はテレビでも見たことのないような完璧な美形が居るんだなって驚いた。
180センチ近い長躯。細身なのに、ひょろっと頼りない訳じゃなくて、かといって筋肉質なマッチョってわけでもなく全てがちょうどいい。
色素の薄い髪はサラサラで、二重だけど鋭い眼差しをいつも気怠そうに細めている。
かっこつけてないのにかっこよくて、高校生特有の浮ついた感じもなくて、何だか色気もある。
まだ通い始めたばかりの桜高のことはよくわからないけど、椎名先輩の存在感とオーラは、きっと抜きん出てると思う。
あの椎名先輩がちゃんと信号を守るなんて……。
幼い子どもの前だから?
それとも赤信号だから?
どちらにしても意外と言えば意外。
私の目は椎名先輩に釘付けになっていた。
男の子を連れたお母さんも椎名先輩の美貌に見惚れている。
椎名先輩は自分を鑑賞したければご自由にとでも思っているのか、人の目を意識して力が入ることもなく、何もかも動作が自然。
……かっこいいな……。
あれ……?
椎名先輩。こっちに向かって歩いてきてない?
心持ち、頭を低くする。
やっぱり、こちらに向かって長い足を運んでいる。
椎名先輩、このコンビニに入るのかな?
どうしよう……。
ドキドキと悪戯に胸が高鳴ってとびだしそうだ。
椎名先輩はコンビニを通り過ぎ駐車場に停められていたバイクに近づきフルフェイスのヘルメットを被った。
あのかっこいいバイク、椎名先輩のなんだ……。
しかも、バイクで通学してたなんて。
椎名先輩の秘密を覗いてしまって、鼓動は加速するばかり。
椎名先輩は私たちより先にバイクを走らせて消えてしまった。
不良……なのかな?
あのバイク、何だかいかつかったし。
でも、乗りこなしていて、椎名先輩に似合っていてかっこよかった。
「吏那、どうした? 顔が赤くないか?」
「な、何でもないよ! お兄ちゃん」
車に戻ってきたお兄ちゃんには何故か秘密にしておきたくなった。
この時から私は憧れだけだった椎名先輩がもっと気になってしまい、この感情を好きだというのだと気づいた。
無謀な恋だとは自分で一番よくわかっている。
遠くからでも椎名先輩を見られた日は嬉しくて、椎名先輩を見られるかもって期待だけで学校に行っていた。
いつの間にか苦痛なだけだった学校が椎名先輩を見られる場所へと意味合いを変えていた。


