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昨日は2学期の終業式があって、今日は待ちに待った12月23日。
椎名先輩とデートをする日。
椎名先輩と2人で出かけるなんて楽しみすぎて仕方ない。
待ち合わせは××駅東口改札に15時。
下ろしたてのグレーのツイードワンピースに白のタートルネックに黒のAラインコート。
リボンが飾られたブラウンのブーツ。
髪はハーフアップにして、緩く巻き、顔にはパウダーをはたき、唇には瑞々しいティントを塗る。
椎名先輩の隣に並んで歩く。
見劣り……しちゃうのは仕方ないとしても、少しでも可愛く思われたいし、椎名先輩に釣り合いたい。
みんなが憧れている椎名先輩。
ずっと遠くから見ていた椎名先輩。
椎名先輩には話してないけど、初めて話したあの日より前から、ずっと椎名先輩のことが好きだった。
睡眠障害を抱えている私は一人じゃ外を出歩けない。
いつもお兄ちゃんに車で学校まで送迎してもらっている。
あれは、私が高校に入学して一ヶ月くらい経った頃だったと思う。
クラスにはすっかり仲良しグループが出来ていたけど、いつも私は一人で居た。
私の睡眠障害を理解してくれる人なんて居ないと思ってたし、話すのが怖かった。
信じて打ち明けても、知らない間に広められそうだし、変な目で見られたくない。
睡眠障害だと医師にはっきり診断される前は先生たちにも居眠りばかりしていると叱られ続けた。
大好きな家族だって困惑していた。
私は眠りたくないのに……。
自分の意識とは無関係に、まるで誰かに奪われるように強制的に前触れもなく意識が途切れてしまう。
それは何の兆候もなくて恐怖でしかなかった。
目を開けているのも閉じているのも、とても怖い。
声にならない叫びは誰にも届かなくて、私から友達が一人、また一人と遠ざかって、気づけば傍には誰も居なくなっていた。
あんな思いしたくない。
だったら高校では最初から一人で居ようと諦めて、塞いでた。
自分がみんなと違うってことを、普通じゃないってことを、みんなに知られたくない。
学校なんて何で行かなきゃいけないんだろう?
いつ眠くなってしまうのかわからないなら、お家にずっと引きこもっていられたらよかったのに。
仲良さそうに友達と話す子たちが、何の心配もしないで体育の授業を受けられる子たちが、うらやましくなるだけ。
普通と違う自分との違いを認識させられるだけ。
何の意味もないと思っていた。
学校は苦痛だけの場所だった。
ある日の帰り、お兄ちゃんがコンビニで珈琲を買いたいって言ったから、駐車場に停めた車の助手席で待っていた。
私の視界に飛び込んできたのは近くの横断歩道。
車通りが少ないためか、歩行者用の信号が赤表示でも誰も気にしないで、どんどん渡ってしまっていた。
昨日は2学期の終業式があって、今日は待ちに待った12月23日。
椎名先輩とデートをする日。
椎名先輩と2人で出かけるなんて楽しみすぎて仕方ない。
待ち合わせは××駅東口改札に15時。
下ろしたてのグレーのツイードワンピースに白のタートルネックに黒のAラインコート。
リボンが飾られたブラウンのブーツ。
髪はハーフアップにして、緩く巻き、顔にはパウダーをはたき、唇には瑞々しいティントを塗る。
椎名先輩の隣に並んで歩く。
見劣り……しちゃうのは仕方ないとしても、少しでも可愛く思われたいし、椎名先輩に釣り合いたい。
みんなが憧れている椎名先輩。
ずっと遠くから見ていた椎名先輩。
椎名先輩には話してないけど、初めて話したあの日より前から、ずっと椎名先輩のことが好きだった。
睡眠障害を抱えている私は一人じゃ外を出歩けない。
いつもお兄ちゃんに車で学校まで送迎してもらっている。
あれは、私が高校に入学して一ヶ月くらい経った頃だったと思う。
クラスにはすっかり仲良しグループが出来ていたけど、いつも私は一人で居た。
私の睡眠障害を理解してくれる人なんて居ないと思ってたし、話すのが怖かった。
信じて打ち明けても、知らない間に広められそうだし、変な目で見られたくない。
睡眠障害だと医師にはっきり診断される前は先生たちにも居眠りばかりしていると叱られ続けた。
大好きな家族だって困惑していた。
私は眠りたくないのに……。
自分の意識とは無関係に、まるで誰かに奪われるように強制的に前触れもなく意識が途切れてしまう。
それは何の兆候もなくて恐怖でしかなかった。
目を開けているのも閉じているのも、とても怖い。
声にならない叫びは誰にも届かなくて、私から友達が一人、また一人と遠ざかって、気づけば傍には誰も居なくなっていた。
あんな思いしたくない。
だったら高校では最初から一人で居ようと諦めて、塞いでた。
自分がみんなと違うってことを、普通じゃないってことを、みんなに知られたくない。
学校なんて何で行かなきゃいけないんだろう?
いつ眠くなってしまうのかわからないなら、お家にずっと引きこもっていられたらよかったのに。
仲良さそうに友達と話す子たちが、何の心配もしないで体育の授業を受けられる子たちが、うらやましくなるだけ。
普通と違う自分との違いを認識させられるだけ。
何の意味もないと思っていた。
学校は苦痛だけの場所だった。
ある日の帰り、お兄ちゃんがコンビニで珈琲を買いたいって言ったから、駐車場に停めた車の助手席で待っていた。
私の視界に飛び込んできたのは近くの横断歩道。
車通りが少ないためか、歩行者用の信号が赤表示でも誰も気にしないで、どんどん渡ってしまっていた。


