──スイミンショウガイ。
動揺する前にそれが何なのか、まず理解しかねた。
それを察したのか宗志さんは言葉を続ける。
「よく夜眠れないだとか、寝付きが悪いだとか言うだろ。あれも立派な睡眠障害だけど、吏那の場合は少し違う。
“本人の意志を無視して、時も場所も選ばずに突然眠ってしまう“んだ」
俺は理解力に乏しいのか。
いや、そんな障害は今まで聞いたことがない。
授業中に眠りたくなくても眠くなる時くらいある。
過去、電車に揺られてたら、いつの間にか寝ていて降車駅を乗り過ごしたこともある。
誰にだって、そんな経験が多かれ少なかれあるだろう。
「よくわからないって顔してるな。
無理もない。俺たち家族だって初めは信じられなかったからな」
混乱している俺に説くように宗志さんは説明を続けた。
──そうだな。
発症したのは吏那が中2の時だ。
当時の担任から吏那は授業中の居眠りが多すぎると、母親が学校に呼ばれたんだ。
居眠りなんて、だらけているとかサボってるとか、マイナスイメージだらけだろう。
ましてや本人の生活態度が悪いと非難されて当然だ。
吏那は何人もの教師に幾度となく叱られてたようだ。
俺たち家族も同じだった。
しっかりしなさいと何も知らずに吏那を責めた。
反省しても繰り返す。しかも、授業が終わっても目覚めない。
友達もだんだん少なくなって、誰も吏那に話しかけようとしなくなったらしい。
集団生活で一度はみ出した者は非難の的になりやすい。
味方が一人もいない中、吏那はどれだけ孤独だったのか。
もっと早く吏那の異変に気づいてやれたら良かったと俺は未だに後悔している。
吏那が“おかしい“ことに気づいたのはちょうどこれから冬本番を迎える木枯らしが吹く頃だ。
英語の授業でスピーチ大会が行われていた時のことだった。
吏那はスピーチを発表している最中に忽然と倒れた。
それはもう中学に救急車が呼ばれるほどの大騒ぎだったらしい。
俺も講義を抜け出して病院に駆け付けた。
吏那が倒れたまま目覚めないと聞いたから、命に関わるんじゃないかと生きた心地がしなかったな。
──しかし、吏那は眠っているだけだった。
そこで初めて医師から吏那の睡眠障害について聞かされたんだ。
「眠るだけなら大したことないって思うよな?
違うんだよ。寝るってことは、その瞬間から、世界に対して無防備になるってことだ」
動揺する前にそれが何なのか、まず理解しかねた。
それを察したのか宗志さんは言葉を続ける。
「よく夜眠れないだとか、寝付きが悪いだとか言うだろ。あれも立派な睡眠障害だけど、吏那の場合は少し違う。
“本人の意志を無視して、時も場所も選ばずに突然眠ってしまう“んだ」
俺は理解力に乏しいのか。
いや、そんな障害は今まで聞いたことがない。
授業中に眠りたくなくても眠くなる時くらいある。
過去、電車に揺られてたら、いつの間にか寝ていて降車駅を乗り過ごしたこともある。
誰にだって、そんな経験が多かれ少なかれあるだろう。
「よくわからないって顔してるな。
無理もない。俺たち家族だって初めは信じられなかったからな」
混乱している俺に説くように宗志さんは説明を続けた。
──そうだな。
発症したのは吏那が中2の時だ。
当時の担任から吏那は授業中の居眠りが多すぎると、母親が学校に呼ばれたんだ。
居眠りなんて、だらけているとかサボってるとか、マイナスイメージだらけだろう。
ましてや本人の生活態度が悪いと非難されて当然だ。
吏那は何人もの教師に幾度となく叱られてたようだ。
俺たち家族も同じだった。
しっかりしなさいと何も知らずに吏那を責めた。
反省しても繰り返す。しかも、授業が終わっても目覚めない。
友達もだんだん少なくなって、誰も吏那に話しかけようとしなくなったらしい。
集団生活で一度はみ出した者は非難の的になりやすい。
味方が一人もいない中、吏那はどれだけ孤独だったのか。
もっと早く吏那の異変に気づいてやれたら良かったと俺は未だに後悔している。
吏那が“おかしい“ことに気づいたのはちょうどこれから冬本番を迎える木枯らしが吹く頃だ。
英語の授業でスピーチ大会が行われていた時のことだった。
吏那はスピーチを発表している最中に忽然と倒れた。
それはもう中学に救急車が呼ばれるほどの大騒ぎだったらしい。
俺も講義を抜け出して病院に駆け付けた。
吏那が倒れたまま目覚めないと聞いたから、命に関わるんじゃないかと生きた心地がしなかったな。
──しかし、吏那は眠っているだけだった。
そこで初めて医師から吏那の睡眠障害について聞かされたんだ。
「眠るだけなら大したことないって思うよな?
違うんだよ。寝るってことは、その瞬間から、世界に対して無防備になるってことだ」


