俺はナミからもらったギャラ500円で、久しぶりにメロンパンを買った。

 食べるって作業すらめんどくさくて、最近の昼食は温かいココアだけで済ませていた。

 今日も吏那は来なかった。

 待つのは苦しいんだと。

 吏那と美術室で過ごした思い出が俺の孤独を確認させてくる。

 今は吏那が居ない美術室に俺一人で居ることが苦痛で仕方ない。

 けれど、俺は吏那に此処に居ると告げた。

 痛みを伴っていたとしても吏那と約束したこの場所に俺は居る。

 小さくても儚くても、吏那との約束は守り抜きたい。

 今、吏那は何をしている?

 俺はどうすればいい?

 自分がこんなに不甲斐ない男だと思わなかった。

 世界が黒か白かもわからない。

 行き先が前か後ろか右か左かもわからない。

 義務的に毎日を送るだけの空っぽな自分。

 ──無気力。

 ナミの言うとおり俺はそうだった。

 今この瞬間に心臓が止まってもかまわないと思っていた。

 だけど今は明日の吏那に会うために、今日も生きたい。

 俺はガキで単純なだけだった。

 吏那を放っておけないし、世界で一番可愛いと思う。

 俺の手で守りたい。

 傍に居たい。

 自分でも驚くほど、吏那だけが好きで心が動かされる。

 悪役でも何だって引き受けてやる。

 気まずく思うならフラれもしてやる。

 ……だから、どうしようもなく吏那に会いたい。