君の膝の骨になりたい

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 次の週、休講掲示板の前に茅野はいなかった。秀幸は大学の夜間部の授業が始まるまでそこで待ち続けたが、とうとう現れなかった。

 その次の日は、部活の練習の時間になるまで掲示板の前に立っていたが、やはり会うことはできなかった。

 休講や追試の情報は学生なら定期的に確認するはずなので、待ってさえいればいつかは会えると思うのだが、会えないところをみると、茅野が秀幸を避けているのだろう。

 水曜日からは、講義と講義の間の短い休憩時間にも探し歩くようになった。
 そして、告白の日から十日目に秀幸はやっと彼をみつけた。

 休講掲示板の前だった。教室移動のためだろう。いつものふくれたリュックになぜか紙袋を二つさげて、重そうな足取りで歩いてきた。

 別棟からやってきてガラスのドアの前に立ったものの、両手がふさがっていてドアを開けられずにもたもたしている。

「茅野!」

 秀幸は廊下に響くような声をあげて走りだしていた。

 瞬間、茅野は顔をひきつらせた。現場を見とがめられた犯罪者のような怯えた表情だった。

 がしゃん、と音がした。茅野が驚きのあまり紙袋を取り落としたのだ。渡り廊下の床に荷物が散らばった。旅行用の歯ブラシセット、シャンプーとリンスのミニボトル。買ったばかりのカミソリ。整髪料のスプレー缶……洗面用具のようだ。