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「ゲイビ鑑賞会やろうって」
「は? 何?」
「大津んちで」
「あいつの家、夜は家の人留守だからさ」

 シャワー室前で、ラグビー部の三年が頭を揃えていた。みんな汗にまみれている。

 練習後の気怠い時間だ。シャワーはつねに上位から。今はコーチ陣が優先で使っていて、秀幸たちは空くのを待っている。下級生はまだ片付けがあってグラウンドから帰ってこない。

 一月。トップシーズンはすでに終わりを迎えていて、チーム内に緊張感はなかった。三年のほとんどがすでに推薦による進学や就職を決めている。それ以外の受験組は練習を休んで勉強している。

 二月に戦勝報告会と三年の引退試合をかねて紅白試合が組まれていた。OB会、後援会の手前、恥ずかしい試合はできないが、試合相手は今まで教えてきた後輩達なのでとくに危機感もない。

 半地下にある十畳ほどの脱衣所は、床も壁もコンクリートむき出しで寒々としていた。ロッカーが壁の二面を覆っていて実際より狭く感じる。

 床に敷かれたすのこの上で、秀幸は両足を投げ出して背中をコンクリートの壁にあてていた。練習後の火照った体に、壁の冷たさが染み入るように心地良い。

「杉野さんが、いつもエロ画像おとしてくれんじゃん」

 部員の一人が腰を下ろしてストッキングを脱ぎながら言う。

「そん中に間違って、ゲイビデオ混じってたって」
「マジか」

 答えた一人は、ぺりぺり音をさせて肩からテーピングを剥がしていた。