「僕の、僕の半月板を……移植に使ってほしいんだ。僕……小野寺と体格は違うけど、問題は骨格なんだし。血液型も一緒だし。僕は今まで学校の体育でしかまともに走ったこともないから、きっと軟骨もほとんどすりへってないと思うんだ」
「茅野?」
突然、きっ、と茅野が目線をあげた。いつもは凪いだ湖のようなおだやかなまなざしが、秀幸をにらむような強い目つきに変わっていた。急に居直ったような、強さを感じさせる顔だった。
「小野寺、黙って僕の膝の骨を受け取ってほしいんだ。だって僕は、今までずっと小野寺に甘えてきて、支えてもらって、なのになにも返せてないんだ。だからせめて、僕にできることをしたいと思ったんだ」
「お前……本気でそんな覚悟してきたのか?」
こくん、とうなずいた。さら、と前髪が揺れる。
「リスク、考えてみたのか? お前の膝から軟骨がなくなったら、今度はお前が苦しむんだぞ。膝が炎症起こして腫れあがったり、水が溜まって痛んだりするんだぞ。杖ついて歩かなくちゃならなくなるかもしれないんだぞ。それでいいのか。いいわけないだろっ」
「いいんだよ。僕はそうなりたいんだ」
「そんなこと簡単に言うなよ。自分の体を傷つけることなんだぞ」
秀幸は立ちあがると、かがんで茅野の右足を、ぐい、と持ちあげた。足をとられた茅野は体勢を崩しかけて、あわてての肘掛けにつかまる。
秀幸はかまわずズボンの裾をまくりあげて白い脛、さらに膝まで露出させた。膝小僧の丸い突起を指でL字になぞる。
「いいか? ここにこんなふうにざっくりメスいれるんだぞ。健康な体に、こんなふうに大きな傷跡が残るんだぞ。いいのか?」
ことさら脅すように言って、茅野を追いつめる。なのに、茅野のほうはまるでなにもかも見通していたようにおだやかだ。
「茅野?」
突然、きっ、と茅野が目線をあげた。いつもは凪いだ湖のようなおだやかなまなざしが、秀幸をにらむような強い目つきに変わっていた。急に居直ったような、強さを感じさせる顔だった。
「小野寺、黙って僕の膝の骨を受け取ってほしいんだ。だって僕は、今までずっと小野寺に甘えてきて、支えてもらって、なのになにも返せてないんだ。だからせめて、僕にできることをしたいと思ったんだ」
「お前……本気でそんな覚悟してきたのか?」
こくん、とうなずいた。さら、と前髪が揺れる。
「リスク、考えてみたのか? お前の膝から軟骨がなくなったら、今度はお前が苦しむんだぞ。膝が炎症起こして腫れあがったり、水が溜まって痛んだりするんだぞ。杖ついて歩かなくちゃならなくなるかもしれないんだぞ。それでいいのか。いいわけないだろっ」
「いいんだよ。僕はそうなりたいんだ」
「そんなこと簡単に言うなよ。自分の体を傷つけることなんだぞ」
秀幸は立ちあがると、かがんで茅野の右足を、ぐい、と持ちあげた。足をとられた茅野は体勢を崩しかけて、あわてての肘掛けにつかまる。
秀幸はかまわずズボンの裾をまくりあげて白い脛、さらに膝まで露出させた。膝小僧の丸い突起を指でL字になぞる。
「いいか? ここにこんなふうにざっくりメスいれるんだぞ。健康な体に、こんなふうに大きな傷跡が残るんだぞ。いいのか?」
ことさら脅すように言って、茅野を追いつめる。なのに、茅野のほうはまるでなにもかも見通していたようにおだやかだ。

