寮の部屋で茅野と向かいあう。今日の茅野は眠ってはいない。緊張にはりつめた面持ちだ。
津和野はそうそうに筋トレルームへ退散してしまった。秀幸と茅野は勉強机と対になっているキャスター付きの椅子に座っていた。
「大事な話って?」
秀幸は食事の帰りに買ってきた炭酸飲料を机の上に置いた。無尽蔵に小さな泡を作り出す透明の液体が、ペットボトルの中で不安定に揺れる。
茅野が秀幸の方に体を向け、あらたまった様子で話しだした。
「この前、臨時休講の時に、ひょっとして秀幸に会えるかもって思って、僕ここへ来たんだ」
背筋をのばし、膝の上で両手をお祈りするように組み合わせて、必死で自分を勇気づけているようだった。
「その時に、あの、バックスのコーチの人と話をしたんだけど」
「コーチって、曽我さんか?」
「名前はわかんなくて、あの、鼻の上の方に大きな傷跡がある、ちょっとワニっぽい感じの」
秀幸は確信した。ワニっぽい感じ、は曽我の目つきが悪いのを茅野なりに優しく表現したのだろう。
「あ、あの、小野寺……本当は膝を痛めてるんだろ。それって、もう半月板の軟骨がすりへってて、安静にしてても治らないんだろ? それで、小野寺は半月板と軟骨の移植手術を待ってるんだって聞いたんだけど」
秀幸は思わず茅野の顔をまじまじと見た。なにか話がおかしい。それでも真剣に話し続ける彼の言葉を最後まで聴こうと、とりあえず沈黙を守った。
津和野はそうそうに筋トレルームへ退散してしまった。秀幸と茅野は勉強机と対になっているキャスター付きの椅子に座っていた。
「大事な話って?」
秀幸は食事の帰りに買ってきた炭酸飲料を机の上に置いた。無尽蔵に小さな泡を作り出す透明の液体が、ペットボトルの中で不安定に揺れる。
茅野が秀幸の方に体を向け、あらたまった様子で話しだした。
「この前、臨時休講の時に、ひょっとして秀幸に会えるかもって思って、僕ここへ来たんだ」
背筋をのばし、膝の上で両手をお祈りするように組み合わせて、必死で自分を勇気づけているようだった。
「その時に、あの、バックスのコーチの人と話をしたんだけど」
「コーチって、曽我さんか?」
「名前はわかんなくて、あの、鼻の上の方に大きな傷跡がある、ちょっとワニっぽい感じの」
秀幸は確信した。ワニっぽい感じ、は曽我の目つきが悪いのを茅野なりに優しく表現したのだろう。
「あ、あの、小野寺……本当は膝を痛めてるんだろ。それって、もう半月板の軟骨がすりへってて、安静にしてても治らないんだろ? それで、小野寺は半月板と軟骨の移植手術を待ってるんだって聞いたんだけど」
秀幸は思わず茅野の顔をまじまじと見た。なにか話がおかしい。それでも真剣に話し続ける彼の言葉を最後まで聴こうと、とりあえず沈黙を守った。

